漢方専門まごころ漢方薬店

ご自分で漢方薬をセレクトすると危ない訳

ドラッグストアには、いくつかの漢方薬が並んでいますので、漢方薬は、ご自分で買うこともできます。

ネットショップでも、買う事は可能です。

ですが、ご自分で漢方薬を選んで買われる人はいったいどんな人でしょうか?

おそらく元々、決まった漢方薬を飲み続けておられて、全く同じ漢方薬であれば問題ないと考えている人ではないかと思います。

他には、お知り合いの人が同じような病態で、悩んでおられて『◯◯っていう漢方薬でよくなったの!』と聞いて、自分も同じもので良くなるかもと思い、買って飲んでみよう!ということもありますよね。

また、最近は雑誌やテレビの宣伝で、『こんな症状にはこんな漢方薬を』というのを見て、一度試してみようと思われることもあるかと思います。

ところが同じ病名や同じような症状でも使う漢方薬は数種類に渡ります。

多い場合は候補として考えられる漢方薬だけで10種類を超えることもあります。

漢方薬を選ぶ基準は、その方の証(体質と病態)に合っているかどうか?です。

例えば、同じように冷えや頭痛で悩んでいる女性がお二人いたとします。

でも、そのお二人の本来の体質や病気の段階が全く同じであるなんてことは、まずあり得ません。

ですから、同じ症状であっても、飲むべき漢方薬は違うものになることが多いです。

例えば、婦人科でよく出される『当帰芍薬散』『桂枝茯苓丸』という漢方薬があります。

それぞれ、ツムラさんの(効能・効果)を下記に引用させていただきました。

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)の効能・効果
  • 体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症:
    月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り

    • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の効能・効果
    • 比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものの次の諸症: 月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症注)、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきび

      注)血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことである。

      悩ましいことに、どちらの効能・効果にも、「下腹部痛、めまい、肩こり、冷え、頭痛(頭重)、月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、しもやけ」の言葉が含まれています。

      もし、ご自分で選ぶとしたら、どちらの漢方薬を選びますか?

      「どっちでもいいような気がするし、どっちも自分の悩んでいる症状に当てはまるなら、どちらも飲めばより効くかも?どちらか一つに決めずにどちらも飲んでみよう。」なんて悩んでしまいませんか?

      ですが、その考えはとても危険です。

      この2種類の漢方薬は、最終的に文字で表現すれば同じ症状である「冷え・頭痛」を治す効能がありますが、漢方薬というものは、その冷えや頭痛を起こしている原因によって選ぶために、最終的に合わせる漢方薬が全く違うものに分かれるのです。

      もし、当帰芍薬散でよくなるはずの体質の女性が間違って、桂枝茯苓丸を飲んでしまったら、『誤治(ごち)』と言って体調が悪くなってしまうのです。

      漢方薬の副作用は、体質と合っていない漢方薬を飲む事自体が副作用なのです。

      この2つの漢方薬は、治す作用が全くが違いますので、もし、同時に飲んでしまうと体の中はとても混乱状態になります。

      ですので、この二つの漢方薬を同時に飲むことは漢方的には考えられませんが、ドラックストアで売られている漢方薬の箱に書かれている『効能・効果』だけを読んで選んでしまうと、どちらも自分の悩んでいる症状と一致するので、なんの疑問もなく、いいものだと思って飲んでしまうかもしれません。

      しかし、残念ながらこのような飲み方をしてもなにもよくなりません。

      よくなるどころか、症状が悪くなる可能性も多いにあります。

      こうなると『漢方薬を飲まない方が、体によかった』ということにもなりかねません。

      たった2種類の漢方薬でも、どちらが自分に合うのかを見極めるのが難しいのです。

      漢方薬は良い効果が期待できますが、よくわからないままで服用してしまうと、逆に悪く作用してしまうことがあるので、とても危険なのです。

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      【引用先及び参考図書・Webサイト】
      ◯ 図説東洋医学(基礎編):学研
      ◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅰ):学研
      ◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅱ):学研
      ◯ 漢方概論:創元社
      ◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
      ◯ やさしい中医学入門:東洋学術出版社
      ◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
      ◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
      ◯ まんが漢方入門:医道の日本社

ブログの著者 東洋医学カウンセラー 松村陽子

ブログの著者 東洋医学カウンセラー 松村陽子

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