漢方専門まごころ漢方薬店

症状をあてはめて漢方薬を選ぶのは大間違い

あなたの体質にあった漢方薬とは?

漢方薬は、体質に合っているかどうか?が重要です。

あなたには、どんな漢方薬が合うのかを探すために体質を分析、診断する作業が漢方医の仕事です。

漢方の勉強をはじめた時、最初から漢方理論の事は、理解できないことが多いので、病名漢方からはじめることが多いです。

病名漢方とは、西洋医学的に診断した病名に合わせて漢方薬を選ぶ方法です。

病名漢方で漢方薬を選んでいると、やがて「病名は、その人の体質をあらわしていない」ことに気づきます。

病名は、体質をあらわしているのではなく、その人の状態をおおまかにあらしているだけで、その人の体質とは関係がないのです。

例えば、高血圧の方では、「女性で痩型で手足が冷える高血圧の方」もいらっしゃいますし、「男性で肥満型、手足がほてる高血圧の方」がいらっしゃいます。

互いに体質は正反対ですが、病名は同じ『高血圧』です。

詳しくは、「病名から漢方薬を選ぶのは大間違い」を読んでみてください。

ただ悲しいことに、漢方の医学理論を理解していないと、体質という考え方自体が理解できないので、病名漢方から抜け出せません。

そして、病名漢方は体質をあらわしていないことに気づくと、今度は「症状が、体質をあらわしている」と勘違いして考えるようになります。
(私もかつてそうでした)

ところが、これまた残念なことに症状が、その人の体質全てをあらわしているわけではないのです。

病名漢方も漢方薬を選んでいく上で、いろいろな問題がありますが、症状だけを当てはめて漢方薬を選ぶ方法も、いくつもの問題があるのです。

症状だけで選ぶ漢方薬の決定的な弱点

漢方薬には、そのお薬が合う症状の条件というものがあります。

頭痛があり、肩コリがあって、悪寒、発熱があれば、葛根湯があう体質です。

症状だけでなく、他にも考えないといけない、いろいろな条件があるのですが、その条件がぴったりとあう体質を正証といいます。

ここで問題なのが、実際には、正証は滅多にいないことです。

症状がいくつか、当てはまらなかったり、逆に葛根湯には書いていない症状があったりします。

例えば「ある程度、症状があっているから葛根湯でいいか」と考えるとしましょう。

しかし、葛根湯によく似た他の漢方薬と見比べてみると実は、葛根湯のような適応症状の漢方薬はたくさんあることに気がつきます。

桂枝湯や麻黄湯も「悪寒」「発熱」「頭痛」「肩コリ」が適応症状なのです。

葛根湯しか知らなければ、患者さんに症状を聞いた時に、その症状があてはまっていけば、『あっている漢方薬を探せた!』勘違いするのですが、他の似たような漢方薬を知っていれば、症状だけでは、どの漢方薬を選べばよいのか、わからなくなります。

不妊症や月経不順によく使われる漢方薬も当帰芍薬散、温経湯と1,2つしか知らなければ、その漢方薬の適応症状をみて、当てはめていけますが、不妊症や月経不順に使う漢方薬は40種類くらいはあり、ほぼ、すべての漢方薬の適応症状に「月経不順や頭痛、肩コリ、手足の冷え」があるので、症状だけで当てはめた場合、40種類すべてが自分にあう漢方薬ということになります。

ところが40種類全部の漢方薬を飲むわけにはいきません。

人それぞれ違う症状

漢方の本や漢方薬の処方箋に書いてある症状を文面でみている分には、不思議には思わないのですが、冷静に自分の症状をよく考えてイメージしてみてください。

当帰芍薬散には、「手足の冷えのある者」と書いてありますが、「年中、手足が冷えていること」を言ってるのか、「たまに冬だけ冷えること」を言ってるのか、「冬に外に出た時だけ冷えること」を言ってるのか、文面だけではわかりませんね。

つまり、この症状は、生きた実践的な情報ではないのです。

漢方の本にも、そこまでは書いてません。適応症状というのは、あくまで、体質を総合的に判断するための参考情報にしかすぎないからです。

症状が示しているのは、身体の中の状態

漢方薬は、症状をあてはめるだけでは最適なものを選べません。

症状が示しているのは、身体の中の不調のサインなのです。

そのサインをいろいろと組みあわせたり、どんな状況のときに症状がでてくるか、場面を考えたりして、総合的に体質を分析するのです。

漢方の本にも初心者用に病名だけで漢方薬を選んだり、症状だけで漢方薬を選ぶようにできる方法が書いてあるものがあります。

中級あたりの漢方の本になってくれば、症状などに漢方独特の診断の方法をとりいれて、体質を判断し、漢方薬を選ぶ方法が書いてあります。

漢方治療の腕が、上級になってくると、いろいろな過去に治った例が書いてあり、それを読んで参考にしたり、大昔に書かれた古典から漢方薬の原点の治療方法を取り入れて、処方したりと、だんだんと症状をあてはめるだけという初心者から高度に発展していきます。

複数になりがちな症状漢方の方法

症状をあてはめて漢方薬を考えていると、だんだん1つの症状ごとに1つの漢方薬が必要だと考えるようになります。

本来、1つの症状だけでは、体質は決められないのですが、西洋医学の処方のように頭痛には、頭痛の漢方薬、冷えには温める漢方薬と足し算のように組みあせていきます。

西洋医学の発想は、「眠れない」と訴えれば、睡眠導入剤、「頭痛を感じることがある」と訴えれば鎮痛剤、「胃がもたれる」と訴えれば胃腸薬と、訴えれば訴えるほど、処方薬が増えていきます。

症状だけで漢方薬を選ぼうとすると東洋医学なのに西洋医学と同じ発想で漢方薬を処方してしまうのです。

当然、東洋医学の漢方薬を西洋医学の理屈で処方してもうまくいくわけがなく漢方薬は効果を発揮しません。

答えは簡単で、『なぜなら、それは一切、体質をみていない』のと同じだからです。

ですので、病名だけで漢方薬を選んだり、症状を当てはめていって、漢方薬を選らんでも効果があるかどうかは、ただの「運」まかせなので、これは治療とはよべません。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 図説東洋医学(基礎編):学研
◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅰ):学研
◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅱ):学研
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ やさしい中医学入門:東洋学術出版社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ まんが漢方入門:医道の日本社

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

ブログの著者 国際中医師松村直哉

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