漢方専門まごころ漢方薬店

麻黄湯が飲める人と飲めない人

風邪やインフルエンザが流行ってきているみたいですね。

インフルエンザの漢方薬と言えば、『麻黄湯(まおうとう)』があげられますが、「麻黄湯って誰でも飲めるのかしら?」と疑問に思っていませんか。

実は、誰でも麻黄湯を飲めば、よくなるというわけではないのです。

なぜインフルエンザに麻黄湯がいいのかと言うと、麻黄湯は急激な発熱の際に飲むことにより、体の熱をMAXまで上げてくれます。

そうすることで体内のインフルエンザウイルスをやっつけることができ、ウイルスと戦った結果、勝利すれば、戦うことがなくなり、その後は自然に熱が下がっていきます。

ところが、この高熱まで上げきるということが、誰にでも大丈夫ってことではないのです。

元々の体力が強い方は問題ないのですが、元々虚弱体質であったり、お年寄りの方や小さい子供さんの場合は体が弱いため、高熱になることで余計に体力を消耗してしまって、ウイルスと戦う前に力を発揮できなくなってしまうのです。

麻黄湯を飲むと熱が上がってきますので、あまりに高い熱を出してしまうことが体にとってより危険になってしまいます。

病院でインフルエンザや風邪をひいた場合、「高熱の時に飲んでください。」と出される解熱剤(頓服のお薬)は熱が上がり過ぎることに耐える体力がないときに必要だからです。

ウイルスを完全にやっつける前に、この解熱剤を飲んでしまうと、強制的に熱が下げられるためウイルスと戦うことができずに、その後、なかなか治らないでダラダラと熱が続いたりしてしまうのです。

体力があれば、短期間で高熱にしてウイルスを撃退できるのが麻黄湯なのです。

ですから、決して何日も飲み続けるような漢方薬ではありません。

例えばです。

ある方は風邪をひいて麻黄湯で熱が下がったとしても、別の方は、同じ風邪でも麻黄湯を飲んで、何も良くならなかったということもあります。

ひどい時には、麻黄湯が全く合わなくて、より風邪が悪化してしまうケースだって珍しくありません。

「じゃあ、麻黄湯が飲めない体質だから風邪を治すことはできないのか?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。

漢方薬には、風邪一つをとっても10種類以上の処方があるのです。

いろんな体力の人やいろいろな症状の人に対して、いろんなアプローチ(治療)ができるのです。

熱は上がるけれど、麻黄湯のようにキツくないので、そこまで高熱にならないような漢方薬であったり、まずは、高熱にも耐えうる体力をつけるような漢方薬や食欲が出るような漢方薬、体の中にこもったままの熱を体の外に出すようにする漢方薬などがあります。

お医者さんが、インフルエンザという、ざっくりした病名に合わせようとするから、まるで、インフルエンザには、麻黄湯しかないようにみえるのです。

また、麻黄湯で熱が下がった後に、体力を回復するための漢方薬に変更して飲むと、より早く元気になれます。

そもそも『インフルエンザ=麻黄湯』という考え方がおかしいのです。

義理の母はとても胃腸が弱いため、「インフルエンザであっても麻黄湯は飲んではいけない。」と常々言っています。

義母のような体質の場合、麻黄湯を飲むとインフルエンザウイルスと戦う前に胃腸がやられて、体力がいきなりガクンと落ちてしまいます。

その上に熱が上がると、体は、その熱に耐えることができません。

義母は普段から病院に行ってもらってくるお薬でも、飲むと必ず体調を崩してしまいますので、飲む量や飲むタイミングを考えて注意して飲んでいます。

急激な高熱には『麻黄湯』ですが、風邪のひき始めで、食欲もあり、比較的体力があるうちに飲まないと意味がありません。

短期間で治療するための漢方薬なのです。

麻黄=魔王のようなイメージで、取り扱っていただけたら、使い方もちょうど良いと思います。(笑)

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【このブログの著者】
まごころ漢方薬店 国際中医師 松村直哉

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会

ブログの著者 東洋医学カウンセラー 松村陽子

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