すぐに効く薬と根本治療できる薬の矛盾
『病気を治したい！』って誰もが思うことですよね。
痛みやだるさなどのつらくて嫌な症状が治って、同時に慢性病も根本から治りたいと思いませんか。
「症状が早く治って、なおかつ根本的に治る！」
皆さんが考える「病気が治る」というのはこういうことかもしれませんね。
しかし実は「症状が早く治る」と「根本的に治る」の２つが同時に存在することは自然界ではあり得ないことなんです。
症状が早くとれる方法は、根本的には治らない方法なんです。
病院で診てもらったとしますね。
痛みや吐き気などのつらい症状をすぐにとめて欲しい場合など、それに対するお薬を処方してもらえば、とにかくその症状は治ります。
しかしこれは、対症療法でその場の数時間、薬効が効いている間だけ治った状態です。
残念ながら、そのような治療では、慢性病などの根本的な治癒には至りません。
すぐには、効果が出るけれど、根本的には絶対に治らないという法則です。
なぜ病院のお薬は効果がすぐに出るのかというと、その人の体の中の機能と関係なく、薬の成分の強い作用で、体内の働きを無理やり遮断したりストップをかけるからです。
そういう構造なんですね。
こういう構造だから早く効きます！
ロキソニンやイブなどの痛み止めのお薬を飲んだ経験がある方はお分かりかと思いますが、飲んで30分後くらいから効き始めて２〜３時間の間は痛みがなくなるかと思います。（人によっては、効く時間が違うことも）そして再び、痛み出したら薬が切れたことに気づくわけです。
痛みを薬の力だけで抑えていただけで、痛みの元となる病態は、自然に治癒するまで治ることはありません。
外傷などの傷の痛みなんかはその傷が治ってくれば、痛み止めの薬を飲まなくても痛みがなくなってきますよね。
反対に漢方薬での治療の場合は、漢方薬を飲んだからといって痛みなどのつらい症状はすぐにはなくなったりはしません。
なぜなら、漢方薬は体内の働きを無視した働きではないからです。
漢方薬の効き方というのは、自分で治す力を後方支援して強くしていきますので、元々の病態が少しずつ良くなっていくのです。
自分自身で良くしていくのです。
ですから、今、感じる痛みを今すぐ、なんとかしたいという目的には合いません。
漢方薬はその人の中にある治す力を強くするものだから、今の痛みを無理やりどうこうする力はありません。
（ただ漢方薬でも体質によったら痛みなどが、たった1包で治ることもめずらしくありません）
漢方薬は、そのときに必要な漢方薬（助け）をその時の体質に合わせなければいけません。
その病気を根本から治すために何（どの漢方薬）が、その方の体質に必要なのかを見極めて、合わせていくことによって、根本から治っていくのです。
漢方薬を飲むことによって気血水の流れの方向性を変えることができ、修復したい体の場所が治っていったりするのです。
それは今日明日、流れを変えたからと言って、すぐに治るものではないですよね。
なぜなら慢性化した病態は日々の積み重ねで１日、２日でなったものではないからです。
本当に、今日とか明日中に絶対どうにかしたい！ということであれば、病院のお薬を上手に選ばれることをおすすめします。
そうすれば、外部からの薬の作用で無理やりに治りますから。
うちでのご相談の中でも、病気の症状の度合いやタイミングを考えて、漢方薬より病院のお薬の方がいい場合もあるので、そういったアドバイスをすることもあります。
だけれども「副作用もなく、体に負担のありそうな無理やりな作用でもなく、今日や明日にでも絶対に根本的に治りたい！」というのは、残念ながら現代の西洋医学、東洋医学、どちらにも存在しないのです。
正直、こういった都合のよい治療を希望されるのは、お年寄りの方に多いです。
「眠れるようになりたいので、眠れるようになる漢方薬を」とおっしゃるのですが、今日、明日、すぐにでもグッスリ眠りたいのであれば、睡眠薬を飲むしかないのです。
漢方薬は体の修復作業を行っているのと同じなんですから、そんなすぐに悪いところを全部修復できないです。一
歩一歩、体の不調を整えていかないとぐっすり眠れる体にはなりません。
それが漢方薬での根本治療です。
「睡眠薬をやめたい・・・」とも言われるのですが、そんな簡単にはいかないのが現実なんです。
一度、睡眠薬で簡単に眠れることを知ったら、体もそっちの方が楽でいいじゃないと感じてしまってるんですね。
そうじゃないんだよ。と体に思い出させて元に戻すことって結構大変です。
漢方薬での根本治療は長年の年月をかけてできなくなってしまった、自分で眠れる力を元に戻すことなんです。
漢方薬での治療は西洋医学の睡眠薬と違って、強制的に何時間か眠らせるような効果はないので、時には眠れない日もあったりするのは仕方のないことなのですが、それを睡眠薬を飲んでいた時と比較され「全然眠れるようになっていない・・・」と言われることもあります。なかなか漢方薬と病院とのお薬との違いを理解してもらえない時は、とても残念に感じます。
病院のお薬と漢方薬は、似て非なるお薬です。
「今、すぐに治したいのか？」
「もう二度とならないように根本から治したいのか？」
すぐに治したい場合は、根本からは治りません。この場合は西洋医学が向いてます。
根本から治したい場合は、すぐに症状はとれないこともあります。
この場合は東洋医学が向いています。
漢方薬は副作用なく、すぐに効いて、なおかつ根本的に治るような便利で都合の良い薬ではありません。
現在は、どちらも治療方法があるので、どちらを望むかで治療方法をうまく使いわけるといいんじゃないかなと思います。
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